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いろはにほへと ~御手洗家の10の掟~
第1章  2歳児に惚れた男?



何の因果か。

30女が再度、文明を掌握する “ホモサピエンス” として転生し。

この世に生を受け――早2年と11ヶ月。



くりんくりんの瞳で見てきたのは、

頭も股も緩い癖に、妙な上昇志向と自信だけは兼ね備えた、己の母の生き様。

いつかはこんな目に合うだろうと、思ってはいたが。



裸足の足でガラス片を踏まぬ様、気を付けてリビングへ向かえば、

親分が住まわせてくれていたそこは、目も当てられない惨状で。

唯一まともだったのは、散乱した家具越しに臨める、都心の夜景だけだった。

「あ~~、どうしゅっかな……」

このままここに居れば確実に、失踪の痕跡を片しに来る、組の者と鉢合わせする。

「……とりあえじゅ、警察……かにゃ……?」

しばらくは国家権力の及ぶそこで身柄を確保して貰い。

ゆくゆくは乳児院? 孤児院? にでもお世話になれれば。

うまく回らない舌に辟易しながらも算段を付けた幼女は、無駄に広いダイニングを通り抜けて廊下に出。

短い脚で先を急ぎ。

玄関の靴箱の奥の奥。

人目に付かない様に隠してあった己の靴に、懸命に短い腕を伸ばした。

その時――



ピーという電子音が辺りに響く。

その玄関扉の開錠音に「しまった……っ」と思った頃には、時すでに遅し。

外から開かれた巨大な扉。

そして、そこに立っていたひょろっとした大男。

そやつ と目が合った途端、

幼女は “己の結末” を瞬時に悟ったのだった。





絶体絶命――



現世では「2歳11ヶ月で あの世行き☠」で、

ファイナルアンサー?







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