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いろはにほへと ~御手洗家の10の掟~
第2章 3歳児の憂鬱
愛らしい顔を こんな(-_-)にしながら、ドン引きしているココに気付かないのか。
白い泡をシャワーで洗い流す男は、呑気に鼻歌なんか吹かしやがっていた。
なるほど。
こやつの頭の中は「面白い」か「面白くない」かしか無いらしい。
(つまり、いつかは私にも飽きて「面白くない」って思う日が来るってことだよね?)
ぺっちゃんこの鼻から吐き出された、軽い嘆息。
なんだ。
心配をして損をした。
能天気に構えていよう。
人生は “ケ・セラ・セラ” だ。
“なるようになる” しかならないし。
それに3歳の身空で出来る事なんて、今ある幸運を受け止めて必死に生きる事のみ――だ。
妙に達観した幼女は ばしゃっと音を立て、白濁の湯に満たされた浴槽の中に立ち上がった。
「パパぁ、もうココ、のぼせるぅ~~」
「え~~? もうちょっとだけ、待てない?」
顔を洗っている最中だった龍一郎が、目蓋を閉じたまま問うてくる。
泡オバケみたいだ。
「1人でお着替え、出来まちゅ~」
そう言いながら、そそくさと湯から出たココ。
ぺたぺたと軽い足音を立てながら、だだっ広い浴室を出ようとすると、
そこにはタイミング良く、大判のバスタオルを開いて待ち構えていた山田がいた。
「ちゃんと暖まりましたか? ココ様」
「あい」
にんまり笑ったココは、真っ白ふわふわのバスタオルに飛び込んだ。
(何だろな~? 子供の頃ってこういうのが、やけに楽しかったり嬉しかったりしてたな~?)
前世、父親や妹とお風呂に入れば。
上がってきた脱衣所で、母親が微笑みながらバスタオルでくるんでくれたっけ。