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いろはにほへと ~御手洗家の10の掟~
第2章  3歳児の憂鬱

そうして連れて行かれた「ゴシュジンサマ」こと、龍一郎の目の前。

小さな顔を涙で濡らした べそっかきに、ご主人様は若干呆れた表情を浮かべていた。

「あ~、「右側には行くな」って言ったのに~」

「……ご、ごめんなちゃい……」

以前 注意された言い付けを守らなかった事に対し、素直に己の非を認めるも、

「おいたした子は、今日一日 ロボットと一緒に過ごしなさい」

龍一郎の返事は、意外にも厳しいものだった。

「……っ!? え゛ぇえええええ~~っっ」

「なんか、凄く嫌がってるなあ。面白いのに、こいつ」

未確認生物をきちんと捕獲してきた、出来の良いロボット。

その頭を龍一郎がナデナデしながら褒めれば、

「ゴシュジンサマ ダイスキ❤ ゴシュジンサマ キョウモ イケメン❤❤」

何やら気持ち悪い言葉を羅列するそいつ。

「おうおう、可愛いやつよのお~。さすが俺の最高傑作~」

「ゴシュジンサマ セカイイチ テンサイ❤ ワタシ ケッコン シタイ❤❤❤」

丸い目の中、ピンク色の❤を浮かべたロボットの求婚に、龍一郎が返したのは とんでもない返事だった。

「ん~。でも、結婚はココとするから、ごめんな~?」

「……ゴシュジンサマァ……」

(おいこら、なんつう語録を植え付けてんだ、こんにゃろめっ)

1人と1体のやり取りを、小脇に抱えられながら見物させられていたココは、

どうやら龍一郎が制作したらしい精巧なロボットの語録に、頭の中で難癖を付けていたのだが。

事態はそれで収拾――とはならなかった

「さあて、ココ。助けて欲しい?」

「……~~っ!」

腰を屈め、己の顔を覗き込んでくる男に、ぶんぶんと栗色の頭を振って首肯するも、

「じゃあ~「ココ、パパのお嫁さんになります♡」って可愛く言えたら、助けてあげるよ?」

そんな無茶な要求を寄越した龍一郎に、ココは全力で喚いた。

「……っ い~や~だぁ~~っ!」

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