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いろはにほへと ~御手洗家の10の掟~
第2章 3歳児の憂鬱
【ココが龍一郎じゃダメな理由・その1】
前世での自分――武田 佳奈(旧姓・花本)の男性経験人数は、
ぶっちゃけ たったの2人だった。
雪深い山陰地方のド田舎で生まれ育った佳奈には、2歳下の妹がいた。
容姿端麗・成績優秀で甘え上手、異性にチヤホヤされる妹に対し、
平凡な容姿にパッとしない成績、そして地味な性格の佳奈は、やはり異性にもモテなかった。
それでも着実に努力を重ね、何とかかんとか三流大学を卒業し。
20社もの就活の末 腰を落ち着ける事となった、某企業の広報企画課。
そこで22歳の佳奈は、初めて異性に恋に落ちた――
相手は3年先輩の営業マン。
社内でも飛び抜けて営業成績も人気も高かった男性から いきなり、
「君のこと、気になるんだ。何でだろ?」
そんな告白まがいの事を囁かれ。
周りからも「あの2人って……」「もしや?」と2人の仲を勘ぐられるという、生まれて初めての経験に、
たぶん、舞い上がっていたのだと思う。
誘われるままに食事に行き。
許容量以上のアルコールで酔い潰れた佳奈は、案の定 お持ち帰りされ。
本人の記憶もおぼろげな中、処女を散らした。
だけなら まだ良かった(?)のだが。
その男は、壊滅的にセックスが下手だった。
その後も数度、求められるまま関係を持ったのだが、
その度に佳奈は、独り善がりな性行為をする男から齎される苦痛に、必死に堪えるだけだった。
それから一月後。
佳奈に飽きてくれたらしい男は、また他の女子社員に触手を伸ばし。
半年後には得意先の社長の娘と結婚し、跡取り息子として社を去ってくれた。
「男に遊ばれ捨てられた」
「セックスなんて痛くて苦しいだけ」
凝り固まった思考に塗り込められた佳奈は それからの6年間、
「もう恋なんてしない」と、某歌詞の如き乾いた生活を送っていた。