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いろはにほへと ~御手洗家の10の掟~
第2章  3歳児の憂鬱

「ちちうえ!」

黒のお仕着せを纏った、ピンと真っ直ぐ伸びた背筋。

それを長い廊下の先に見つけたココは、己の義父を呼び止めた。

くるり とこちらを振り返った山田は、無駄のない動きで歩み寄ると目の前で止まり。

「何です? “娘” よ」

常の「ココ様」呼びではなく「娘」と呼んだ男は、義娘の両脇に白手袋の掌を挟むと、ひょいと持ち上げ。

そのまま空き部屋に入室し、椅子の上に幼女を立たせた。

そうすると、178cmの山田 と 90cmのココの目線が近くなる。

「パソコンかスマホが欲しいでしゅ。しかも大至急!」

開口一番、珍しくオネダリしたココに、いつもは無表情に近い顔が何故か剣呑に歪んだ。

「……はい……? 3歳児にしてエロサイトを ご覧になりたいのですか?」

「~~~っ!? にゃワケ 無いでしょっ!」

幼女に対するものとは思えぬ義父の返しに、ココは速攻 突っ込む。

(な……っ 何で PC = エロサイト になるんだっ!? もしかしてサトちゃん自身、そうなのか?)

己の義父の まさかの性癖(?)に度肝を抜かれていると。

「その年でPCなど、言語道断。調べたい事があるなら、ライブラリーで本を読みなさい。本を!」

そう要求を棄却した山田は、ココの狭い額に でこピンしやがった。

「……え゛ぇ~~」

(だって~、そのライブラリーに育児書が無いんだもんさ~~)

両手で おでこ押さえながら、不服そうに唸るココにも、

山田は「「え~」じゃありません」と譲る気は無さそうだ。

(てか、この人。「本を読め」とか……。私が3歳児ということ、解ってんのか? 本当……)

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