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いろはにほへと ~御手洗家の10の掟~
第2章 3歳児の憂鬱
「字が読めましぇん(`・ω・´)キリッ」
3歳児は識字能力 無い筈だ! と、何故か椅子の上で踏ん反り返りながら主張すれば、
帰って来たのは、想像もしていなかった返事。
「嘘を吐きなさんな。貴女、いつも人目を盗んで、本を読み漁っているでしょうが」
「……――っ!? な、何のことでしゅかぁ~?」
確かに山田の指摘通り。
ここの屋敷に世話になりだしてから暇を持て余せば、ライブラリーに忍び込み時間を潰していたが。
まさか それを目撃されていたとは気付かず、咄嗟にとぼけてみるも。
「それに毎朝 坊ちゃまの新聞も、抱っこされながら目で追っているでしょう?」
「う……っ」
次いで寄越された山田の指摘に、ココは進退窮まった。
(し、しくじった……。
新聞の壁で 誰も自分の事が見えてないと思って、超 油断してた……orz)
しかし、ふと冷静になって考えてみれば。
山田は “3歳児のココが漢字まで読める” という事実を知りながらも、
これまでの3ヶ月間、一度も疑問を呈したり「ビックリ人間だ!」等と、騒いだ事は無かった。
(う~~ん、これは 一か八か……賭けてみるか……)
腹を決めたココは、恐る恐る桃色の唇を開く。
「だ……誰にも、言わないで下さいましゅか?」
「ええ勿論。私は口が堅いほうです」
しれっと即答された相槌に、小さな顔が微妙な表情を浮かべた。
「………………」
(「自分は口が堅い」という人間ほど、口が軽いんだけどな……)
ヘーゼルの瞳を、一瞬 胡乱気に細めたココだったが。
何だか「もういいや……」という割り切りもあり、己の身の上話を続けた。
「……実は、私には……“前世の記憶” があるんでしゅ」
「…………、へ~~」
一瞬微妙な間はあったが、とりあえず続きを聞く気らしい山田。