この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
いろはにほへと ~御手洗家の10の掟~
第2章 3歳児の憂鬱
中身は三十路だけれども。
幾多の試練も、修羅場も経験してきた身だけれども。
現実を突き付ける義父からの言葉に、さすがに凹んでいると。
「まあ 万が一、坊ちゃまが貴女から興味を失い、他の女性に目を向けることになっても」
「……――っ」
思わず身構えたココに対し、山田の声は いつも通り冷静だった。
「私は貴女の義父ですし、貴女は私の義娘である事には変わりません」
「……ふぇ……?」
(……え……?)
「ちゃんと責任と愛情を持って、貴女が一人前になるまで私が育てますよ」
「……~~っ」
思ってもみなかった言葉。
けれど、
本当は心の底で脅えていた現状。
それを打破してくれた山田の言葉に、ココは息を飲む。
「何故なら――」
「な、なじぇなら……?」
若干 涙声でオウム返しした幼女に 目の前の男は、ココも初めて目にする苦笑を浮かべた。
「貴女は “面白い” ですからね」
ひと月前、
『どうちて ココを “パパのお嫁さん” に、ちようと思ったの?』
そう龍一郎に問うた時、
『だって、面白そうだろう?』
との返事が返ってきたが。
それと全く同じ答えを寄越した山田に、ココは「むぅ」と納得いかなさそうな唸りを上げる。
(なんだよ、なんだよ~~? 私のどこかそんなに “面白い” んだよ~? 訳分からん……)
「ほら。そろそろ おやつの時間ですよ?」
白手袋に包まれた両手を差し出してくれた山田に、椅子の上、おずおずと身を乗り出したココ。
軽く持ち上げられた身体は、そのまま床へと降ろされるかと思いきや。
意外や意外、胸に抱っこした義父はそのまま歩き出した。
「………………っ」
その山田らしくない行動に、驚きつつ。
何故か赤面したココは、照れを誤魔化す様に 目の前の胸に顔を埋める。
(うぅ……、なんだ、これ……(ノω≦)コッパズカシィ)
でも、
良かった……!
これで龍一郎をフっても、食いっぱぐれる事は無いなっ!!
「ぐふふ……(*´艸`)」
義父の腕の中。
心の底からの安堵を覚えつつ、気持ち悪い含み笑いを零すココなのであった。