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いろはにほへと ~御手洗家の10の掟~
第2章  3歳児の憂鬱

中身は三十路だけれども。

幾多の試練も、修羅場も経験してきた身だけれども。

現実を突き付ける義父からの言葉に、さすがに凹んでいると。

「まあ 万が一、坊ちゃまが貴女から興味を失い、他の女性に目を向けることになっても」

「……――っ」

思わず身構えたココに対し、山田の声は いつも通り冷静だった。

「私は貴女の義父ですし、貴女は私の義娘である事には変わりません」

「……ふぇ……?」

(……え……?)

「ちゃんと責任と愛情を持って、貴女が一人前になるまで私が育てますよ」

「……~~っ」

思ってもみなかった言葉。

けれど、

本当は心の底で脅えていた現状。

それを打破してくれた山田の言葉に、ココは息を飲む。

「何故なら――」

「な、なじぇなら……?」

若干 涙声でオウム返しした幼女に 目の前の男は、ココも初めて目にする苦笑を浮かべた。

「貴女は “面白い” ですからね」



ひと月前、

『どうちて ココを “パパのお嫁さん” に、ちようと思ったの?』

そう龍一郎に問うた時、

『だって、面白そうだろう?』

との返事が返ってきたが。



それと全く同じ答えを寄越した山田に、ココは「むぅ」と納得いかなさそうな唸りを上げる。

(なんだよ、なんだよ~~? 私のどこかそんなに “面白い” んだよ~? 訳分からん……)

「ほら。そろそろ おやつの時間ですよ?」

白手袋に包まれた両手を差し出してくれた山田に、椅子の上、おずおずと身を乗り出したココ。

軽く持ち上げられた身体は、そのまま床へと降ろされるかと思いきや。

意外や意外、胸に抱っこした義父はそのまま歩き出した。

「………………っ」

その山田らしくない行動に、驚きつつ。

何故か赤面したココは、照れを誤魔化す様に 目の前の胸に顔を埋める。

(うぅ……、なんだ、これ……(ノω≦)コッパズカシィ)



でも、

良かった……!

これで龍一郎をフっても、食いっぱぐれる事は無いなっ!!



「ぐふふ……(*´艸`)」

義父の腕の中。

心の底からの安堵を覚えつつ、気持ち悪い含み笑いを零すココなのであった。







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