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いろはにほへと ~御手洗家の10の掟~
第2章  3歳児の憂鬱

「にゃんにゃん、おいで~」

先端に ふわふわのネズミが付いた猫じゃらしで、中庭で日向ぼっこする ぬこの気を引いてみる。

(うむ。今の自分は どこからどう見ても、惚れ惚れするくらい “3歳の幼女” だ)

己の擬態ぶりに、幼い顔に恍惚の表情を浮かべ、猫じゃらしを振るも、

「ぶにゃ~~」

不細工な鳴き声を上げながら、忌々しげに逃げる ぬこ。

「ネズミだよぉ~~? にゃんにゃんの大好きな、ドブネズミだよ~~?」

ここ数日、手懐けたくてアプローチを続けているのに、

人見知りにも程がある ぬこは、全くココに懐く気配はなかった。

それどころか、追い掛け回し続けると仕舞には、

こちらを睨み付けながら「フ~フ~ッ」嘶き、今にも飛び掛からんと低姿勢で威嚇してくる始末。



何だ おぬし?

もしかして、見えてんのか?

私の右肩の上に、私の前世の姿でも浮かんでいるというのか?

……やめてくれ。

私、ホラーとか心霊現象、からっきしダメなんだよぉ……orz

転生者なのに。



それにしても、あの顔面凶器(酷)――鬼瓦料理長でさえ、ぬこを手懐けているというのに。

こんなにロリ可愛・美幼女の自分には懐かぬとは、何たる屈辱。

愛らしいヘーゼルの瞳を剣呑に細めたココだったが、しかしその表情は すぐに改められた。

「……ふっふっふっ」

しかしな、ぬこよ。

今日のココ様は、いつもとは違うよ?

『猫にマタタビ、お女郎に小判』

とまで言われる猫の大好物、マタタビを入手したのだよ。

どこでって?

植物図鑑を手にちょっと林に入ったら、すぐに見つかったのさ。

「……ふっへっへっ!」

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