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いろはにほへと ~御手洗家の10の掟~
第3章 4歳児とプー太郎(もどき)
小さな掌で金の装飾が施されたグラスを持ち、こくこく飲み下す幼女に、
「あはは、髪ボサボサじゃないか」
大きめの口で笑った龍一郎は、細長いだけが取り柄の指で栗色の髪を梳き始めた。
まだまだ細く量もさほど無いが、指に吸い付く柔らかさは、子供の頃にしか味わえない手触り。
前髪は作らず、背中の真ん中まで伸びた栗色の髪は、年を重ねても淡い色のまま。
きっと、母親譲りの美しい亜麻色の髪を誇る少女へと、成長するのだろう。
「う~~ん。脚を開くのが遅いのかな~~?」
開脚前転の改良点を真剣に悩むココ。
小さな口から発される言葉は、もうしっかりとしたもの。
舌っ足らずな喋り方をからかう楽しみは失われたが、その代わりにハキハキ沢山話すようになったので、これはこれで嬉しい成長だった。
数分後。
遊び疲れたのか、撫でていた小さな頭が ウトウト船を漕ぎ始めた。
午前中は ぬこを追い掛け回し、午後は一緒にプールで泳いだので、もうヘトヘトなのだろう。
「おや、おねむですか」
ティーセットを片しに来た山田の声に、龍一郎は首を傾げる。
「サトちゃん。ココの体毛、全てがこの色になるのかな?」
栗色の髪は日光を受けると金色に輝き、それはそれは綺麗だが。
「恐らくそうでしょうね。眉も睫毛も栗色ですし」
己の義娘を見下ろす瞳は、黒縁眼鏡に越しでも分かる柔らかなものだった。
「……へ~~」
これからもっと成長すれば、この白い肌を彩るのは、栗色の体毛。
「……今、最低なことを想像されたでしょう?」
執事の指摘通り “恥毛と脇毛も栗色” と妄想していた龍一郎は、恥ずかしげもなく「もちろん」と即答したのであった。