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いろはにほへと ~御手洗家の10の掟~
第3章 4歳児とプー太郎(もどき)
「さてと。ココ~、おネンネの前に、お風呂入ろうな~?」
自分の太ももの上に頭を乗せ、ぐっすり寝入っている幼女を促せば、
「……うにゃぁ……」
もうこのまま寝てしまいたいのだろう、桃色の唇から零れたのは甘いぐずり声。
「ん? ついにネコ語を習得したか~?」
11kgまでになった身体を抱きかかえ立ち上がれば、
「……ぬ゛ごぉ~~……」
何故か恨めし気に唸られたのは、この屋敷にちょくちょくやって来る野良猫の名前。
「あはは。ぬこの夢見てるのか?」
中庭に面するバスルームへと向かう道すがら、龍一郎はニヤニヤと思い出し笑いを浮かべていた。
何故かココにだけ懐かなかった黒猫。
いつも生傷が絶えない小さな手を風呂で舐めて労われば、
イタくすぐったそうな声を上げるココに、堪らなく萌えた。
流石にその状態が3週間も続けば、ぬこと良く似た人懐っこい猫を調達してこようとも思ったが。
ココが手懐けんと毎日あの手この手で張り切っている様子も面白くて、しばらく様子を見守っていた。
その結果。
1ヶ月後、温室で昼寝していたココの足元で、ちゃっかり丸まっている ぬこがいて。
『ツンデレぬこ、最高~~っ!!!』
起き抜け、そう歓喜に打ち震えていたココの姿は記憶に新しい。
そして、
“3歳児がツンデレというワードを知っている違和感” には全く頓着せぬ龍一郎は、
「我は目的を完遂した――っ!」と、浮かれて小躍りする幼女の姿に、
『か、可愛すぎる……っ』
柱の陰、完璧に心奪われていたのだった。