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いろはにほへと ~御手洗家の10の掟~
第3章 4歳児とプー太郎(もどき)
月日は移ろい師走に突入すれば、御手洗家も例に漏れず寒気に襲われた。
とはいえ石造りの堅牢な屋敷は、寒冷対策もばっちり。
ツバサは「手入れ大変なんだよ~~?」とぼやくが、
3つあるリビングに、ライブラリー、ティールーム、ダイニングには暖炉があり。
かつ全部屋が一括空調システムで、快適な温度に保たれている。
なのに――だ。
なのに、我が家のお姫様は冬の朝が苦手らしい。
色とりどりのプフ(革スツール)が ごろんごろんと散らばるモロッコ風の寝室。
その だだっ広い空間に、ぽつんと置かれた天蓋付きのベッド。
紅色オーガンジーのカーテンに守られ深い眠りに就く4歳児に、しばし見惚れていた龍一郎だったが、
そろそろイキイキと輝くお目めも見たくなり。
羽毛布団から辛うじて出ている ちっちゃな鼻を、指先でつんと突いてみた。
すると、クシャミの寸前の如く むごむごと真っ白な鼻をひく付かせ。
かといって起きる様子も無いココは、相変らず固く目蓋を閉じたまま。
「……ふ……っ」
思わず苦笑した龍一郎。
骨ばった細長い指で、今度は鼻頭をつつと撫でれば、相当擽ったかったのか。
小さな両拳で ささっと鼻をガードした幼女は、もぞもぞと身じろぎしながら羽毛布団の中へと隠れてしまった。
「……~~っ か、可愛いなあ、おい……っ」
(なんなんだっ この ぐうの音も出ぬ、愛らしい にゃんこは……っ)
頼りない胸板の奥 “思春期の乙女” ばりに、きゅうんと疼いた心臓。
それが母性(父性?)によるものなのか、ただのロリ属性によるものなのか。
はたまた、明確な恋心なのか。
己でも判別は付かないが、確実に4歳児に懸想している自覚はあり。
その気持ちのまま上掛けを剥いだ男は、シーツの上で真ん丸になっていた幼女を、有無を言わさず抱き起した。