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いろはにほへと ~御手洗家の10の掟~
第3章  4歳児とプー太郎(もどき)

「……~~っ」

惰眠を貪っていた ぬっくぬくなベッドに比べれば、室内の気温は肌寒かったのだろう。

ひょろ長い身体を這い登るように身をくねらせたココは、龍一郎の首に短い両腕を絡ませると、

まるでコアラが木から落ちんとそうする様に、ぎゅうぎゅうと抱き着いてきて。

隣のリビングへと向かっていた男は、

「あ~~、求められる俺様、めちゃくちゃ幸せ……❤」

と、緩み切った表情を浮かべたのだった。



それから1分後――



ようやく目を覚ましたココは、頭を預けていた首元から むくりと顔を起こしたのだが。

やっと開かれたヘーゼルの瞳は、起き抜けにも関わらず、何故か剣呑に細まっていく。

「……何してる、ですか……?」

お寝坊サンな己を起こしてくれた相手に掛けるには、あまりに酷い幼女の第一声にも、

それを受け止める龍一郎はと言えば、向けられる冷め切った視線に、

己でも気付いていなかったM属性(?)に、ぞくぞくと身を震わせ。

「ツンデレもまた良し!」

「………………」

剣呑から一転、呆れ果てた視線を寄越す幼女を屁ともせず、朝っぱらから大いに萌えたのだった。



胃腸虚弱なココと、ゆっくり朝食を摂り。

そののち龍一郎が足を向けたのは、□の字を描く屋敷の左側、

半地下に設けられた広大な施設――研究室だった。

その前室、壁に懸けてある白衣を羽織り、エアカーテンをくぐり。

陰圧に保たれた次の部屋は、目に入れても痛くない程 猫可愛がりしているココにも、その存在を教えていない場所。

理由は――

「精密機器が多々あり、幼女に触れさすには危険なモノが保管されているから」

――だ。

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