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いろはにほへと ~御手洗家の10の掟~
第3章  4歳児とプー太郎(もどき)

びっりびりに散らかした色とりどりの包装紙を、短い両腕で掻き集めていると。

お腹に回された片腕に、あまりにも呆気なく引き寄せられてしまった。

本日 初めて酒を口にした男は、どうやら酔っているらしい。

煌々と燃え盛る暖炉の炎に照らされている、というのもあるが。

いつもひょうひょうとしている顔が、今は ほんのり赤かった。

「ココ~、俺にはクリスマスプレゼント、くれないの~?」

少々奥二重の瞳を細めながら おねだりしてくる龍一郎に、太ももの上に乗せられたココはきょとんとする。

「え? あげたよ~?」

欲しい物は何でも(PC等以外は)買い与えられるのに、

現金は1円も金を持たぬ幼女が用意出来るプレゼントなんて、たかが知れている。

そう、泣く子も黙る「肩叩き券」だ。

それを5枚綴りで皆に配ったココは、ちゃんとその責務も全うする予定だ。

まあ、4歳児に肩を叩かれて効くかどうか? までは責任持てないが。

「ん~、肩叩き券も嬉しいけれど――」

珍しく言葉尻を濁した龍一郎に、栗色の頭が微かに傾く。

20歳の若僧だと肩が凝る事も無く「肩叩き券」では ありがたみが無いのだろうか?

(まあ、パパはプーだしなあ……)

真っ白フワフワのドレスに包まれた平らな胸で、そんな酷い事を思っていると。

何故か、龍一郎の顔が迫ってくる。

それを驚く事も無く見上げていたココは、いつも通り顔中にキスをされるのだと達観していた。

なにせ、今までに何度も何度も何度も何度も……∞、嫌がるそぶりを見せたのに、

龍一郎のその悪癖(?)が、改善される事は無かったのだ。



だから、

全く身構えていなかったのだ。



笑うと深い えくぼが浮かぶ大きな唇が、

まさか、

4歳児の小さな唇に吸い付くという “蛮行” に及ぼうとは――


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