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いろはにほへと ~御手洗家の10の掟~
第4章  5歳児は達観する

龍一郎とプールで遊んだのち軽く昼寝をしたココは、夕方近くになると半地下にある厨房にいた。

昨年のクリスマスに、皆に5枚綴りで配った「肩叩き券」

その役務を果たすべく効き目があるのか分からぬまま、小さな拳を懸命に振り下ろす。

「トントントントン 日野の2トン」

「………………?」

「トントントントン! 日野の2トン!」

「お嬢。なんすか、そいつは……?」

「え~~? 知らないの~~?」

某トラックのCM曲(?)を口ずさみながら叩いていたココを、和食用割烹着姿の鬼瓦が振り返る。

その顔は良く言えば「前述のCMに出ているリリー・フ○ンキー」に似ており、

悪く言えば「悪役面の俳優・吉田 鋼○郎」に激似だった。

「ねえ、パパって昔から “ああ” なの?」

「 “ああ” とは?」

「ん~~、なんというか、同じ年頃の女性よりは、若い子が好き……? みたいな」

肩を叩く手を止めず、若干回りくどい聞き方をしたココに対し、鬼瓦はずばりと質問の意図を口にした。

「ああ、いわゆるロリコンっつうやつすか?」

「う、うん……」

お色気たっぷりの妙齢の女優にも、18歳のFカップアイドルにも目もくれず、自分の様な5歳の幼女がいいという龍一郎。

その性癖は以前からのものなのだろうか?

「坊ちゃんのお相手は、年上が多かったと思うが……?」

軽く首を傾げながら答えた料理長に、「そ、そうなんだ~~」と相槌を返し。

祖父と孫ほど年の離れた2人の話題は、本日の夕食の献立へと移って行く。



そうか~~。

年上女性が相手だったのは、私の母親だけかと思ったけど。

元から、年上好みだったのか。

じゃあ、テレビの中なんかじゃなくて、身近に素敵な年上女性がいれば、

今の危険な状態を打破出来るかも。

ううむ……。



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