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いろはにほへと ~御手洗家の10の掟~
第4章 5歳児は達観する
しかし、その翌日――日曜日の夜。
いつもなら とうに夢の中にいる時間、ココの姿は何故か己の寝室とは違う場所にあった。
竹編みの細長いフロアスタンド。
間接照明の仄かな灯りに照らされたフロアの中心、4本柱の天蓋から覗くのはキングサイズのローベット。
沢山のクッションが散らばったそこに、ひょろ長い脚を投げ出しているのは言わずもがな。
この部屋の主である龍一郎だった。
バリテイストに纏められた寝室で、タブレットを弄っているらしい自分の保護者に、
ココは扉の隙間から覗きながら、コンコンと小さくノックした。
「ん……? あれ、ココ。寝たんじゃなかったのか?」
ネグリジェの胸に大きな枕を抱えた幼女の姿に、男は不思議そうに問うてきたが、
何故か怯えた様子でヘーゼルの瞳を潤ませたココは、らしくもないおねだりを口にする。
「パパ……。一緒に、お寝んね……」
常なら絶対にしない添い寝の要求を聞きとめた龍一郎は、途端に奥二重の瞳を細め、
「もう、ココは甘えん坊だなあ~~」
そんなデレデレした声音で、おいでおいでをしてくる。
しかし自分でお願いしたにも関わらず おずおずとベッドに近付くココの表情は、
何故か苦虫を噛み潰したかの様なそれだった。
というのも――
「ん~~? お化けが怖いのかな~~?」
と面白がってくる龍一郎にこそ、この状況の責任があるからだ。
本日の昼下がり。
8月真っ只中の暑さに(空調の効いた室内なのに)うだっていた男は「良い事を思いついた!」と飛び起きると。
大人しくぬこと遊んでいたココを小脇に抱え、図書館へと連れて行った。
そして、そこで強制的に観さされたのは、
「夏といえば、やっぱりこれだろう?」
そう――心霊番組である。