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義父との秘密
第2章 ある夜から
 部屋の外から、義父に声をかけた。


「ありがとう、すぐに行くよ。和美さん。」


「はい、じゃあ。お待ちしてます。」


 答えながら、階段をトントンと降りた。
 忠良が来るまで、和美は最近のことを思い返していた。


(なんか変なのよねぇ。この間も私の部屋の枕の位置が、ちょっと動いてたみたいだし。早くお義父さん、降りてこないかな?)


(少し、遅いかな?そういえば、お風呂に入ってる時、覗かれてるみたいな?!あっ、昨日入ってる時、パチッて音が聞こえてたわ。まさか?!)


 そこまで考えていた時、トントンと階段を降りる音が聞こえ、忠良が顔をのぞかせた。


「いい匂いがしてるね、今日はなんだろう?あれ、和美さん、どうしたんだね?」


「えっ、いえ、忠雄さんが帰って来るまでに、あと何日かなって、考えてたら、ちょっと、、。」


(まさか、お義父さんが犯人なんて、まさか、ね。)


 夕食のビーフシチューとサラダをそれぞれの皿に盛り付けながら、彼女は小さな疑いを打ち消した。


「うん、美味しいなぁ。和美さんは料理が上手いねぇ。忠雄も果報者だね。」


「嬉しい。お義父様に褒められると、次も頑張らなくちゃって思います。」


 夕食を時間かけて味わいながら、忠良はまだ迷っていた。


(どうすかるかな?和美さんは、忠雄の嫁さんだしな。しかし、彼女が自分を知らないで終わるなんて、どうするか?)


「ごちそうさま。美味しかったよ。」


「ありがとうございます。いつも、綺麗に食べていただけるんで、料理のしがいがあります。あの、コーヒーはどちらに?」


 いつもと同じようにたずねると、


「コーヒー、今夜は私の部屋で飲むよ。頼めるかね?」


 忠良はためらいながら、答えた。


(少し、仕掛けてみようかな。今夜なら、大丈夫だろう。だめでも、次があるから。)

「後で、お持ちしますね。」


 うん、とうなずいて忠良は二階へ上がった。
 和美は洗い物をはじめ、


(この間の忠雄さんとの電話の後も、確か、同じだったわね。まさか、息子の嫁を、考えすぎかな。)


 忠良は、部屋に入ると、クローゼットの奥の隠し扉を開け、小さな袋を取り出し、袋の口を開け中身が見えるように、入口の棚の上に置いた。
 十五分ほどすると、


「お義父さま、コーヒーお持ちしました。」

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