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義父との秘密
第4章 囚われて
 和美を座らせながら、


「加納君、だめよ。今は仕事中だから、呼び捨ては。それに、社長の息子さんの奥様の前では、私が恥をかくでしょう!」


 麻奈美にキツク返され、モゴモゴと謝りながら和美の方をチラリとうががった。


「奥様、この頼りないのが私の婚約者の加納幸治です。」


「あっ、あの加納です。」


 慌てて加納が頭を下げた。


「幸治さん、こちらが社長の息子さんの奥様、和美さん。」


「こちらこそ、加納さん、よろしくお願いします。和美です。」


 軽くあいさつをしながら、和美は会場を見回していた。


(このままじゃ逃げられない。どうしよう。)


 和美はジリジリとしながら、出口を何度も確かめていた。


「あの、奥様、お披露目が終わるまではここにいて下さいとの社長からの言伝です。じゃないと忠雄に跡を継がせにくくなるからと、伝えて下さいとのことです。」


「えっ!そっ、そんな!うそでしょ?」


 麻奈美の言葉に和美は金縛りにあったように、身動きがとれなくなった。


「えぇ、会社の事は私が一切を任されていますが、次の社長の人事だけは、私ではどうにもなりませんから。社内を納得させるためにも、奥様の役目は重要なんです。」


(そんな、、逃げ出したい、、のに、、、どうしたら、、。)


「あの、それはお義父様の決断次第ってことですか?それで、そのためにも私が、いえ、お披露目が大事なんですね?」


 言ってしまって、和美は唇を噛んだ。


(いけない、相手の思う壷じゃない。でも、あの人が社長になれるんなら、、だめよ、、)


 麻奈美の唇に皮肉な微笑み浮かんだ。


「えぇ、奥様。その通りです。お披露目の後は、忠雄様を我社へお迎えして、社長の跡を継いで頂くポジションで、社内の全てを見て頂く予定です。」


 麻奈美の視線が冷たく、和美を苛んだ(さいなんだ)。


(さあ、あんたはどうするの和美さん?旦那を社長にして、奴隷になるの?それとも、逃げて自由の身になって旦那はサラリーマンのまま。あなた次第よ。逃げるなら止めないわよ。)


 麻奈美は、半分面白がっている自分自身を不思議に感じていた。


(そんな、でも、逃げたい。あの出口を出れば、、、。)


 一瞬、唇を強く噛み、


「あの、お化粧室は?」


 決心したように、和美が聞いた。


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