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春うらら
第12章 水曜日
俺は兄貴の積極的な態度に驚いた、何だ?兄貴の好みは分からない、「来るもの拒まず、去る者追わず」の兄貴の恋愛を知っているわけではないけど、兄貴ってこんな風に口説くのか。兄弟でいるときは見えない強引な『男』に唖然とする。

兄貴は終始彼女の手を取りたがり、肩を抱きよせようとする。その度に彼女の緊張が伝わる。いつもの過剰なスキンシップに慣れている彼女からは想像もつかないが、確かにはじめて会った男にここまでされ、しかもそれが客…これは可哀そうだ。さてどうしたものか?
「レイちゃん、俺と席代わろう。兄貴これ以上は見てられない。」
兄貴は驚いたようだが、彼女と俺が入れ替わると真横の俺を憎らしげに見る。
「友晴、どうしたの?そんなに『がっつく』感じお前らしくないよ?なんかいつも『余裕』な感じなのに。何か仕事で嫌なことでもあった?」
「俺が今までどう見えてたか知らないけど、こんなに嫌がられたのは初めてでショックだ。」
傍若無人に見えた振る舞いが、ただ必死だったのかと思うと、隣の肩を落とした兄貴が可愛く見えた。いつも完璧な兄貴、憧れと嫉妬でいつも見ていた。あまりにも今まですべてを簡単に手に入れて来た事でこんな姿見たことなかった。
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