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春うらら
第17章 麗の過去 中学時代
下りの電車から降りた郡司はいつになく慌ただしい駅のホームに違和感を覚えながら、麗に電話した。
すると、ホームの隅のベンチ下から着信音が聞こえる。
のぞいてみると、麗の携帯だった。以前一緒に買ったストラップがついているから間違いない。きょろきょろと見回すと駅員と目があった。
「あの、携帯がここに落ちていたんですが・・・待ち合わせしていた友人の・・・」
「あぁ、あの子の友達?今派出所にいるから、もって行ってあげてくれる?」
はぁ?派出所?
訳が分からずとりあえず、派出所に行く。
「すみません、携帯を拾ったんですが・・・」
奥から年配の警察官が顔を出す。
「おや、坂口さんちの郡司君じゃないか。」
「あ、こんにちは。あの~麗がここに来たって聞いて・・・何かあったんですか?ホームで麗の携帯拾って・・・」
「ははは、麗ちゃんはやっぱりゆかりちゃんの娘だねぇ」なんて言いながら奥の部屋に通される。「そうだ、郡司君、宮内さん家の誰か連絡付く?このまま帰すわけにもいかなくてさぁ・・・」
奥の部屋に入ると目の前に麗がいた。
左のおでこが腫れ上がり、擦り傷からは血が滲み、制服は乱れスカートの裾からのぞく膝も擦り傷から血が出ていた。
「大丈夫?麗?」
静かに声をかけるとバツの悪そうな顔をして、顔をしかめながら
「郡兄・・・私、仕返ししてないよ。」と小さく笑った。でも体中が痛いのか少し動くだけでも苦痛に顔をゆがめた。
「ちょっと電話してくるからな、待ってて?一緒に帰ろうな。」
俺は部屋を出てすぐに雅と『静香』に電話した。
女将さんに、伝えると『30分くらいで着くからお願いね』と言われた。