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第7章 けじめ

「なんか、驚いてるけど……聞いてなかった？」



「……いや……全然……」




よく考えたら、私は店長のこと全然知らない。


色々私のことは聞いてくるくせに、自分のことはあんまり喋らないのだ。



「別に言う必要ねぇだろ。
第一ここに来もしねぇお前のことをなんで俺が桜に話すんだよ」



不機嫌そうに店長はタバコに火を付ける。




「まぁそうだけど。

幸ママと俺の話したりするかなって」



「しねぇよ」





店長の返事を聞いて少し拗ねたような拓也さんは、カウンターを乗り出して店長のタバコの箱を掴む。


そして、そこから一本タバコを抜き出すと、ポケットから取り出したマッチで火をつけた。



机に放り出されたマッチ。



そこに“ radice ”の文字が見えて、思わず私は拓也さんに声を掛けた。




「どうした？

えっと、桜ちゃんだっけ？」



「あ、はい…あの……。

拓也さんて、幸さんとはどういった関係なんですか？」


「ん？あー、俺、radiceでボーイやってるの。だから、幸ママは俺の雇い主ってやつ」