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Blindfold
第9章 本物
「本当に──」
聞き取りづらい、小さな声だった。
久々に聞いたお姉ちゃんの声。
かずにぃが
私と似ていると言った声。
自分では、分からない。
私にとって、この声はお姉ちゃんの声でしかない。
「本当に
2年経ったのね……」
そして、私から目線を外して、天井を見上げている。
「良かった……っ薫っ……本当にっ……」
未だ泣きじゃくっているかずにぃ。
目を覚ましてもなお、お姉ちゃんだけは時が止まったまま。
私は、ゆっくりとかずにぃとは反対側の脇に行き、お姉ちゃんを見つめた。
「2年間目を覚まさなかったって言われて……信じられなかったけど…」
細い腕が、震えながら私に近付く。
そして、弱い力で私の手を握った。
「桜を見たら……
本当だったんだって……分かったわ……」
喜ぶかずにぃとは裏腹、お姉ちゃんは切なげに微笑む。