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Blindfold
第11章 正体
「いくら疲労が溜まってたとしても、風邪ごときで病院に運び込まれるだなんて…。
もう若くないってことよ、達也」
「……るせぇな」
「悪態つけるくらい元気なのね。安心したわ」
幸さんの言葉に、店長は不機嫌そうにふっと鼻を鳴らす。
恋人みたい…
いやいや、こんな時に何を…
そんなことどうでもいいじゃん。
心で独り言を言いながら私は頭を振る。
倒れた時よりは顔色がいい。
良かった、と思って胸を撫で下ろしていると、幸さんはじゃあ、と声を発した。
「えっ……も、もう行くんですか?」
「うん、お店の準備しなきゃいけないし。それに達也も大丈夫そうだし」
ニコリと笑う幸さんとは裏腹、このままでは密室で店長と2人きりになってしまうことに焦りが止まらない。
気まずい……
─────────許してくれ
昨日のことは、まだ何も解決していない。
「じゃあ、桜ちゃん、達也をよろしくね!」
「よろしくって…っ」
私の言葉を聞かずに手を振った幸さんは、再び扉をスライドさせると満面の笑みで病室から出て言ってしまった。