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Blindfold
第11章 正体
行ってしまった……
扉を眺めながら、店長の方を向くタイミングを伺う。
このまま、お姉ちゃんのところに行ってしまおうか。
……そうした方が良さそうだ。
「あ、あの、店長、私……」
「待て」
急いで立ち上がると、突然止められて仕方なく店長に向き直る。
「………いくな」
「っ………」
赤らんだ頬。
目は熱のせいか心なしか潤んでいる。
明らかにいつもと違う店長の様子に戸惑いながら、ベッドの脇にあるイスに座りなおした。
苦しそうな息遣い。
しばらくそれだけが病室に響く。
妙な緊張感を打ち破ったのは店長だった。
「昨日は……悪かった…」
「…………っ…」
「本当に……」
悔しそうな店長の表情をみて、何故か胸がチクりと痛んだ。
「……いいんです…」
小さい声で呟く。
それしか言葉が思いつかなかった。
「……泣きもしないで、無理矢理笑顔を見せながら淡々と語るお前を見てたら……」
昨夜のことを思い出す。
一気に色々な事が起こりすぎて、私の心はもう追いつけず、涙を流すことすらままならなかった。
「本当に…悪かったっ…」
言葉の真意を探る。
今度は何も言葉は返せなかった。