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Blindfold
第12章 風
だからって、何もなかったようにしていいのだろうか。
でも……
やっぱりもうこれ以上物事をかき混ぜたくない。
そんな複雑な相容れない気持ちが私の中でくすぶっているのは、事実だ。
「ふぅ……」
深呼吸して、空気を身体に取り込む。
それでも、大分軽くなった。
自分勝手かもしれないけれど、
言わなくていいこともある。
これ以上傷付く必要はないし、これが私の「自分を大切にする」方法だと思っている。
病院の前の並木道。
幾度となく通ったはずなのに、こんな景色が広がっていたことを、今になって気付いた。
天気がいいから、入院している患者さんらしき人たちが何人か散歩している。
その中で、あるベンチに座るガタイのいい人が一際目立っていた。