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Blindfold
第12章 風
昨日もそうやって、すぐに幸さんは去ってしまった。
「今日はもう散々達也と話したから」
「そう…なんですか」
「うん。このまま行けば、もう明日の朝には退院するって」
はあ…と気の抜けた返事をしながら、ギュッとカバンの持ち手を握る。
良かった。
大きな病気じゃなくて…
「じゃあ、また、お店でね」
手をヒラヒラさせた幸さんは、チラと店長に目配せして、そのまま去っていった。
慌ただしい人だ。
綺麗だし、美人だけれどもエネルギーがあって、かっこいい。
ああなりたいと思うけれど、到底及ばないような気がする。
「……桜」
「は、はい」
振り返ると、すぐ近くに店長がいて、思わず後ずさった。
何しろガタイがいいから、知らぬ間にそんな近くに来られたら、その迫力だけで圧倒されてしまう。