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Blindfold
第13章 つぼみ
再び、お酒を作りに戻る店長の姿を何の気なしに目で追った。
「……俺は別に何もしてないよ」
「そんなことないよ」
樹に視線を戻す。
驚いたような、不思議なような、そんな表情。
「樹が、もうやめようって言ってくれたから……」
─────────俺たち、幼馴染みだろ?
─────────俺は『樹』だ
自分が自分であることの大切さ。
羨ましいとさえ思った、その姿。
「先陣切ってくれて……お手本見せてくれて…ありがとう……」
今考えれば、鬱々としていた私の生活が、少し光りを見せたのは、樹と幼馴染みに戻ったあの日だったような気がする。
しばらく黙っていた樹は、昔と同じように、桜、と呼んだ。
「やっぱ、お前、その髪型の方が似合ってるよ」