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Blindfold
第13章 つぼみ
肩までの髪。
それに触れながら、奥から再び現れた店長を見る。
両手に握られたレモンがクルクルと宙を舞う。
前に進めている───
そんな自覚が少しずつ芽生えている。
「……お前、年上好きだなぁ」
「えっ…?」
思わず樹を見ると、樹はフッと笑ってグラスのお酒を飲み干した。
「俺は同い年だからダメなのかー…」
「何の話……」
「別に?」
そう言いながら立ち上がる樹を黙って見つめる。
意味が分かるようで、分からない。
いや、分からないようで分かる。
そんな心境だ。
「じゃ、俺いくわ」
「もう?」
「うん」
マスター!と声を掛けて、店長を呼んだ樹。
じゃあ、と微笑んだ樹。
「またね」
いつかは決めない、再会の約束。
そして私は、軽く手を上げて樹を見送った。