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Blindfold
第13章 つぼみ
カウンター越しの絶妙な距離感。
顔を上げずに水滴をいじる。
「何書いてんだ?」
「なにも…」
テーブルに描いていた絵を覗かれて、素っ気なく答える。
閉店後、私と店長だけのこの空間。
もう何度も経験しているのに、今日は妙に緊張している。
「今日来た、あの幼馴染み…」
「………樹、ですか?」
あぁ、と答える店長の声を聞きながら、絵を描いている指を止めた。
「結構いいやつっぽいじゃん」
「………まぁ…」
店長の言う通り、樹はいいやつだ。
クルリと背を向けた店長は、何やら締めの作業を始めている。
私は顔を上げて、その背中をじっと見つめた。
ガタイがいいから、肩幅も広い。
「解放してやれとか言ったけど」
「…………」
「あぁいう気心の知れたやつにしとくってのも、ありなんじゃないか…?」