この作品は18歳未満閲覧禁止です

- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
Blindfold
第15章 花言葉

着替えて、表に戻ると、幸さんがケラケラと笑っていた。
病院で二人を見た時もそうだった。
放たれる大人のオーラ。
それには到底叶いそうもなくて…──
ぼんやりと眺めていると、店長がそれに気付いて、私の元に寄った。
「桜…?」
「わっ、私…椅子、下ろしますねっ…」
フロアに出ようとした私を店長が止める。
「なんかあったんだろ」
優しい眼差しで見つめられて、胸がトクンと跳ねた。
気持ちに気付いてから、そうなる以前、自分がどうやって店長と会話をしていたのか、思い出せない。
彼にとって、私はただの従業員だと分かっているのに。
「なんもっ……」
「ホントか?なんか聞いて欲しくてこんな早くに来たんじゃないのか?」
「………っ」
そうだった。
かずにぃからも、そしてお姉ちゃんからも離れてやっと自由になった。
この喜びを、一番に伝えたくて、そして私は町を走り抜けた。

