この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
Blindfold
第22章 後輩
そろそろ店が開く。
胸がざわついて、モヤが晴れない。
葵の方の様子を見ると、胸に手を当てて深呼吸していた。
いくら初日だからって大袈裟だ。
「大丈夫だ、そのまま深呼吸しろ。別に死にゃしない。すぐ慣れる」
優しい……
はぁ、と大きめにため息を吐いたら、聞こえたのか、店長が私のそばに近付いてきた。
片眉を上げて私の顔をじっと見ている。
────────店長ってなんていうか、ダンディ?ていうか、イケメンっていうか……素敵な方だから
さっきの葵の言葉が、頭の中で再び響く。
その通りだから、ほんと腹立つ。
気付いてから、余計にそう見えるから、それもほんとに嫌だ。
「…………なんですか」
「何不機嫌になってんだよ」
「別になってない…です」
「なってるだろうが」
おっしゃる通り。
でも、そんな大学生の若い女の子相手にモヤモヤしてます、なんて言ったら馬鹿にするに決まってる。
そんなこと口が裂けても言いたくない。
「まぁいい。なんだか知らねぇけど、客が来てもその態度続けるなよ」
そんなことを言われたら余計にイライラする。
店長の言葉に返事をせずに、私は自身のワイシャツの袖を巻くった。