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Blindfold
第22章 後輩
「忙しいから、用がないなら呼ばないでくれる?」
ていうかもうむしろ帰って欲しくまである。
「あのちょいワルオヤジ、若い子が好きなのかな?」
北野の言葉に思わず顔が強張るのが分かった。
ちょいワルオヤジっていうのは、店長のことだ。
北野はいつも店長のことをそうやって呼ぶ。
正直死語だと思うけど。
「桜ともまぁ年離れてるしなぁ。でもあの子はそれ以上だよね?桜に飽きたからまた別のタイプの若い子試すつもりだったりして」
「────────……」
返す言葉がなくて、佇むしかなくなった。
バカバカしいと思う気持ちと、そうなんだろうかっていう不安な気持ちが押し寄せて、葵と店長を交互に見た。
葵は大袈裟に頭を下げている。
常連さん達に、声を掛けられているんだろう。
お客さんも楽しそうに笑って葵を見てる。
そして、店長も、そんな健気な葵の姿を見て、優しく微笑んでいた。
「っ……─────」
心配だから見ているんだろうけど……
あまりにも優しい顔をしているもんだから、暗い感情が心の中を占拠した。
「桜の今の顔、最高」
ハッとして北野の向き直ると、北野は笑いながら自分の持っているグラスを指差した。
「これ、おかわり」
「……」
「ちょいワルオヤジが、あの子に行っちゃったとしても、桜には俺がいるんだから安心して」
この人と話して、いいことなんてまるでない。
じんわりと私の心に侵食してきて、黒いものを撒き散らされるようなそんな感覚がいつもする。