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Blindfold
第22章 後輩
「別に機嫌悪くないけど」
私の答えに、店長はふーーんと声を漏らした。
なんだ、そのふーーんっていうのは。
それすらも余裕な感じが醸し出されている。
「お前さ…」
「何ですか」
いつまで経ってもお酒を運べない。
気怠く返すと、今日さ────と店長が言葉を続けた次の瞬間。
パリーーーーーン!!と盛大にガラスが割れる音が響いて、店長の言葉が遮られた。
何が起きたかは見なくてもなんとなく検討はつく。
葵だ──────
絶対に。
「す、すみませんっ…!!!!」
案の定葵の大きな声が響いて、はぁ、と息を漏らした。
まぁ、開店前だって割りそうになってたし、やるとは思ってたけど。
ほうきと、それから雑巾と……そんなことを思いながら動き出そうとした時、目の前で店長が素早く動くと、急いで葵のそばへと駆け寄っていった。
「すみませんね、うちの新入りが。お客さん、怪我してないです?」
「あー私は全然大丈夫だけど、葵ちゃん、大丈夫?」
「私っ……ほんと、あのっ……」
完全にパニックを起こしている葵は、ひたすらにごめんなさいとお客さんに謝っている。
「ほんと、大丈夫だからさ」
「すぐ片付けますね〜」
店長が散らばったグラスをほうきで掃こうとすると、すかさず葵もしゃがみこんでカケラを拾う。
「私がやったので、私やりますっ…」
「あ、おい、お前そうやって素手で───」
「痛っ…」
遠目からも、葵が指を切ったのがわかる。
ほんと、どこまでもドジな子だ。