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Blindfold
第22章 後輩
「おいおい、それ以上動くな。いいからじっとしておけ」
店長は葵を宥めるようにそういうと、カウンター内に戻って救急箱を掴むと、再び葵のところに戻っていた。
見ていたくない。
なのに、自分の知らないところで何かが起きるのも嫌で目が離せない。
当然のように、店長は葵の腕を掴んだのを見て、胸がチクりと痛んだ。
そして、手早く消毒を済ませた店長は、葵の指に絆創膏を貼る。
なんでそんなことするの、とかいうバカみたいな気持ちに翻弄されて、自分が嫌になってくる。
自分の店の……バイトの新人が怪我をしたら、当たり前なのかもしれない。
でも、いやだ。
「ありがとうございます……」
涙目でそういって葵が店長を見上げている。
周りのお客さんも、心配そうに見ている中で葵が頭をかいた。
「ほんと私ドジで……っ…、迷惑かけてばっかでごめんなさい」
「最初はそんなもんだって。ね、マスターも許してあげて」
その場が優しい空気で満ち溢れれば溢れるほど、自分だけが浮いているような感覚になっていく。
やっぱり見ていられなくなった私は、その場からそそくさと立ち去って、北野にお酒を持っていった。