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Blindfold
第22章 後輩
「桜さんは…きっとそんなことなかったです…よね……っ」
私の初日のことを言っているんだろう。
正直あんま覚えてない。
でも、こんなにあわあわしたような記憶もグラフも割った記憶もないのは確かだ。
振り返って子犬みたいな様子の葵を見る。
隣で店長も私のことを見ている。
気を遣えよって感じの顔だ。
でも、そんなの知らない。
「そうだね。そんなにひどくなかった」
「おい、桜」
「正直、向いてないと思うからやめた方がいいんじゃない? その方が私も助かるし」
「さーーくーーら」
私を制止する店長は、それが逆効果だってことに気付いてない。
いいんです、と葵が店長を止めた。
「本当のことだから……」
対応に困ったのか、店長も黙ってしまった。
代わりにはぁ……と息を吐いて、立ち上がる。
何をするのか、気になって見ていると店長はカウンターの中に入って、夜間を取り出し、水を入れると奥のコンロに乗せて火をかけた。
「店長………桜さんの言う通り、私がいたら迷惑なので私……」
「指は」
葵の言葉を遮った店長は、タバコに火をつけながら葵にそう言って、手を伸ばした。
「指……?」
「あぁ、さっき怪我したところ」
「………もう痛くないです」
「見せてみろ」
葵が手を伸ばす。
そして、店長がまたその手を掴むと、また胸がザワザワした。
─────────── 桜に飽きたからまた別のタイプの若い子試すつもりだったりして
北野の言葉が駆け巡る。
バカみたい。
ほんと、ほんとにバカみたい。