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Blindfold
第23章 夢
「本当、お客さんそっちのけで、色んな顔してるもの」
色んな顔……?とは、どんな顔なんだろうか。
「もちろん、優しい顔で見守ってる時もあるけど、ほとんどがハラハラしたような顔ねー」
「ハラハラって……私別にドジじゃないですし、そんなハラハラさせるようなことしてませんよ」
葵ならまだしも、私はそんなことはない、はずだ。
あんなに慌てたりもパニックになったりもしない。
それにもうあそこで働き始めてから3年目になるんだし。
「そういうハラハラじゃないのよねぇ…」
「……………?」
幸さんが何を言いたいの分からず、グラスに口をつける。
「桜ちゃん、結構お客さんにも人気あるし、話しかけられるでしょ」
「そう……?ですか」
そんな自覚はない。
確かに軽く話しかけられるくらいは別にあるけど、長話したりすることなんかはほとんどない。
「そういう時、達也はいつも『俺のかわいい桜に話しかけてんじゃねぇよ』って顔してる」
「っ……──────」
「取られる、とか思ってんのかしらね?」
また笑った幸さんを横目で見た。
その話は本当なのか。
そんなこと思ってるだなんて言われたこともないし、そんな素振りすらも感じたことがないけど……
「そんなこと、言われたことないですけどね」
「そう? でも達也分かりやすいじゃない?」
それも思ったことがない。
むしろ、何考えているんだかいつも分からないくらいだ。
「と・に・か・く!達也は桜ちゃんのことだぁぁあい好きよ」
大袈裟な言い方に顔が熱くなる。
「っ……そんな機嫌とってくれなくて大丈夫ですよ」
「あら、ほんとよ? あの人の片想いを2年間もそばで見てきた私がいうんだから」
恥ずかしくなって、私はひたすらにお酒を煽る。
本当にそんなに好きなんだったら…
そう言ってくれればいいのに、さ。