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Blindfold
第24章 飼い主
「起き上がれそうか」
「………まぁ」
返事をすると、店長はそうか、と言って、キッチンでカチャカチャと音を立てた後、お椀をダイニングテーブルの上において、椅子に腰掛けて、それを指さした。
「これ、飲め」
「………?」
「二日酔いには、しじみ汁って決まってんだよ」
さっきから朝の匂いだと思ってたのは、お味噌汁の匂いだったのか。
私は素直にはい、と返事をしてゆっくりとダイニングテーブルに歩みを進めた。
それにしても体がだるい。
なんでこんなことになっているんだったっけ……
お椀を掴んでその温もりを感じる。
そして、少し啜るとそれが体全体に染み込んだ。
「昨日は、悪かった」
突然謝ってきた店長に、びっくりして私はお椀を置いた。
謝ってる……
けどなんでだっけ。
「葵を入れる前にお前に一言言うべきだったな」
その言葉をトリガーに色々と思い出して、また気分が悪くなった。
そうだ…………
葵……。あの若いドジな子が入ってきて、それで平野が余計なこと言うから、私余裕がなくなって……
自分で割ったグラスの映像が脳内で再生される。
そして、泣きながら飛び出して、幸さんのところに行って、お酒を飲んで……
「………私、何時にここに来ました…?」
幸さんのお店、radice(ラディーチェ)の途中から記憶が全くない。
自分が何かしでかしてそうで怖い……と思いながら恐る恐る店長を見た。