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Blindfold
第24章 飼い主
痛い頭であれこれ考えを巡らせて、私は部屋着を着た。
素直にならなきゃ嫌われる。
それは嫌だから、自分が今どうするべきなのかは分かっているのに、うまく決心がつかない。
今日だってシフト入ってるし葵も来る。
葵は……店長のこと、好きなんだろうか……。
私とは違って若くて愛嬌があって素直な子。
店長だってやっぱそういう子がいい……だろう。
昨日はムカついてたっていうのに、今日は昨夜の自分の粗相もあって寂しさの方が優っている。
どうしたらいいのか、分からない。
でもずっと脱衣所にいるわけにもいかないので、私は、一人でため息を吐くと意を決して脱衣所の扉を開けた。
「─────…」
ふわりと、さっきのお味噌汁とは違う匂いが掠める。
知ってる。
優しくて落ち着くこの匂い。
「上がったか。ちょうどだったな」
そう言って店長は桜柄の私のマグカップに紅茶を注いでいる。
「まだ体調わりぃなら、その辺の薬、適当に飲めよ」
机に置かれたビニール。
そっとそこへ近づいて、袋の中を見るといくつか薬が入っているのを見て、唇を噛んだ。
この人は一見ぶっきらぼうだけど、
でも、あんなことをした私を夜遅く、radiceまで迎えにきてくれるし、
朝起きたら私のためにお味噌汁も作っておいてくれるし、
私のために薬まで買っておいてくれて、そして紅茶も淹れてくれる。