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Blindfold
第25章 尊さ
「ちょ、ちょっと……」
危ない!と言いながら、葵の持つグラスを掴んで店長が置いたカウンターに戻すと、葵は私の手を突然ギュッと掴んできた。
「桜さんっ……!」
「なに……っ」
「ほんっと、尊いっ……!」
「は………?」
訳が分からず、首を捻る。
この子、とうとい??って言った??
全く意味が分からずに困っていると、葵は私の手を掴んだまま今度は店長の方へ向いた。
「店長も……! 桜さんのこういうところが堪らないんですよねっ……」
「…………は…?」
店長も訳が分からないようで、片眉を上げている。
この状況なに……。
て、いうか……
「意味わからないこと言ってないで……質問に答えてよ」
本題を逸らされても困る。
私は何とか葵の手を振り解いてそういうと、葵は、誤解です!!と叫んだ。
「私……一応彼氏もいますし、店長はそういう目では一切見てません!」
最早失礼なのでは、とも思えるほどはっきりとそういった葵をじっと見つめる。
本当だろうか……?
本人を前にして嘘をついている?
そんな考えも過ったが、あまりにも純粋無垢な笑顔に、そんな疑いも馬鹿馬鹿しく見える。
でも、だったらあのキラキラした視線は何……?
私だって別に鈍感って訳じゃないし、あの視線に何の感情とないっていうのはちょっとおかしな話だ。