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第3章 お店

「この前だって、私、一人いい子見つけたのよ？」



そう言いながら、幸さんはグラスを指図す。


店長の持ったシェイカーから、お酒が吸い込まれるようにして入っていった。




「へぇ？」


「まぁ、見つけたというより、『働かせてください』って言って突然来たんだけどね」





まるでドラマのような話だ…



私はもう帰ったお客さんのだと思われるグラスを下げながら、幸さんの話を聞き入っていた。





「すごい美人な子なの。若くてねぇ…」



「いまどき突然お水の世界に飛び込む子がいるんだな。気が知れねぇわ」







きっと事情があるんだろう。



みんな



何かを抱えて



必死で生きているんだ。





心から幸せだと言える人が


一体この世に何人いるだろう。





まぁでも、そんなことはどうでもいいことなのかもしれないけど。




「そうそう。そう言えば、その子に『桜子』って源氏名、付けて上げたのよ！」



幸さんが私の事を見つめて微笑む。