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Blindfold
第27章 掛け持ち
「やっぱ桜っていい女だよね」
ペロリと舌舐めずりした北野悠を私は細目で見つめる。
「私、ここではスミレだから。」
「スミレ……か」
「あと……何も頼まないなら帰って」
「おいおい、俺一応客だぞ?」
ハハと笑った北野悠を見ながら、私ははぁ…とため息を吐いた。
「桜と……違うか、スミレと一緒に飲めるの、いいね」
「………店長には言わないで」
「え? じゃあこれ、俺と桜の秘密の関係?」
気味悪く目を輝かせた北野悠をじっと見つめた。
スミレって言ってるのに、桜に戻ってるし。
「ねぇ、ふざけないで。本当に、約束して」
「うーん。もちろんいいけど、事情教えてよ」
なんでよりにもよってこいつに引っ掛かっちゃったのか。
ほんとに災難だ。
でも黙らせるには仕方ないから、私はイヤイヤながらも事の顛末を北野悠に話した。
予想していなかった理由だったからか、望み通りの理由でなかったからなのか、北野悠は、聞いてきたくせに「へぇ」とつまらなそうに呟いた。
「桜って乙女だね」
「………うるさいなぁ。てか、スミレ、だってば」
「あーそうだったそうだった」
へらへらと笑った北野悠は、ソファーの背もたれに腕を回しながら、お酒を飲んだ。