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Blindfold
第28章 疑惑



「……桜」



葵には聞こえない小さな声で呼ばれて、私は躊躇いがちに振り向く。




「は…い…」



「……今日……泊まれよ」



少し照れ臭そうにしている店長に胸が鳴る。


私も、変なところで終わっちゃって正直体が疼いてる。


本当は泊まるつもりなかったけど……


コクリと頷くと店長は少し屈んで私の唇を塞いだ。




「っ……─────ん」




ゆっくりと、それでいて官能的な甘いキス。


葵にバレないように、さっきより短めに離れてしまった唇が惜しい。


またぼんやりしながら、店長を見上げると、店長は少し乱暴に頭をかいた。




「着替えてこい……」


「………はい」




早くバイト終わんないかな…


始まる前からそんな事を考えて、ふわふわした気持ちを抱えたまま、着替えに向かった。





「………さくらさん…!」



更衣室で、ひそひそ声で話来ていた葵に私は、また冷静なふりをして、「なに?」と言葉を返す。




「どうです? 店長にバレてないです?」



「あ……うん、多分」



「良かったぁ」と呟いた葵は、今度はキッときつい目をして私の肩を掴んだ。



ほんと、喜怒哀楽が激しい子だ。




「『radice』で変な奴に絡まれたり、ストーカー被害にあったりしてないです!?」



「………うん。昨日、北野悠が店に来て、バレたってことくらい」

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