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Blindfold
第28章 疑惑
忙しい時間のピークが過ぎた頃、カランと扉の鐘が鳴って、私は扉の方を見た。
短髪黒髪に、一見爽やかな笑顔。
だけど私にとってはやはり気味が悪くて、思わず「いらっしゃいませ」代わりにため息をついた。
そいつは紛れもなく北野悠なわけで、そういえば昨日「radice」で明日はこっちに来るって言っていたのを思い出した。
「やっほー、桜……あ、じゃなくてスミ────」
「───── いらっしゃいませーー!!!」
変な事を言い出そうとしている北野悠の言葉をかき消すべく、大きな声で挨拶をする。
すると、北野悠は望み通りって顔をして私に微笑み掛けた。
そして、いつもの奥の席に行くのかと思いきやまさかのカウンターに腰掛けたので、私は目を見開いた。
ここじゃ、お酒を作る店長に声が聞こえてしまう。
そして……今日の北野悠は絶対にヤバい。
「ここに座んのか」
店長も不思議そうに北野悠に尋ねる。
「別に自由席でしょ?」
そう言って意地悪く笑う北野悠に店長は「勝手にしろ」と返事をした。
店長に変なこと言わないか、気が気じゃない。
私はカウンターにすぐ行ける位置に立って、仕事を続けるけど、気が散ってしまって全然仕事にならない。