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Blindfold
第28章 疑惑
駅まで葵と歩きながら、深くため息を吐くと葵は困ったようにしている。
「なんか……急に話し合わせてもらってごめん…」
「全然! 桜さんのためならなんでもしますよ!」
「………ありがとう」
それにしても今日は最悪な日だった。
「悠さえ来なければ……」
「………店長、結構怒ってましたね…」
「いや、まぁ、そりゃ……そうだよ、ね」
怒ってたと言うか、もはや呆れたのかもしれない。
今店長の中で、私は叔母さんの看病と偽ってあのヘンテコな男と会ってたと思われていると思うと……
「あと1週間、ですよね…」
「うん」
「さすがに店長に話して、誤解解いた方がいいんじゃ……」
葵の言う通りかも知れない。
でも、逆にここまだ来てネタバラシしちゃうのも、シャクだ。
「ここまで来たら突き通したい」
悠に台無しにされた、なんてそんな事許せないし。
立ち止まった葵は、「うーーーん」と困ったように唸っている。
「大丈夫、あと1週間だから」
とは言え、隠し通せるのか自信ないし…
適当なこと言って、あと1日行くはずだった「Blindfold」のバイトは休みにしてもらった方がいいかも知れない。
「葵、来週の私のシフトなんだけど、さ」
休ませてと言い掛けたところで葵はスマホの画面を見ながら「あ!!」と叫んだ。
「終…電……」
虚しい呟きに、私も緩くため息をつく。
「泊めてあげるから」
「……えっ…?」
「だから来週の私のシフト────」
「──── やったー!! 桜さんちー!!!」
途端に喜び出す葵を見て、やれやれと思いながら私は葵と一緒に家に帰っていった。