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Blindfold
第28章 疑惑
翌日、
お昼すぎ、ふぁーと欠伸をしている葵を尻目に、私は化粧を始める。
「……大学、大丈夫なの?」
「あ、今日は授業ないんですよー!」
お気楽だなぁとか何とか思いながら、マスカラを乗せる。
ひょこっと私の隣に来た葵は私の横顔をじぃーーと見ている。
「………なに」
「いや、昨日も思ったんですが、桜さんすっぴんだとかわいくて、お化粧すると綺麗系に変身するなぁって」
「気が散るから、見ないで」
鏡を掴んで葵に背を向けると、葵は「えー!」とわざとらしく不貞腐れた。
自分の家に、誰かがいるという、不思議な感覚。
友だちなんかいなかった私が、だ。
店長と付き合ってから、私の生活は確実に色々変化してる。
なんとなく胸がくすぐったくなっていると、突然スマホのバイブ音が響いた。
葵の方にある私のスマホの画面を葵が勝手に覗いている。
そして、「桜さん!」と少し慌てた様子でスマホを私に差し出した。
「着信です!! しかも店長!」
「えっ……」
マスカラを急いでしまった私は、焦りすぎて震えるスマホをまるで熱々のなにかのように、手のひらで踊らせた。
「ど、どうしよっ…」
「どうしようも何も……っ…」
同じくらい慌てている葵に助言を求めたところで意味はない。
意を決した私は電話に出て、恐る恐るスマホを耳に当てた。