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Blindfold
第28章 疑惑
本当に、私は嘘をつくのが下手だと思う。
声は裏返るし、言い淀むし、これじゃ不信感しか与えない。
分かっていても、何もならない。
「………分かった」
それでも、店長はそれだけ言って深くは聞いてこない。
「すみません」と素直に謝ると、「いや…」と言って店長はまた少し間を開けた。
「忙しい時に…悪かったな」
「こちらこそ…」
「また、落ち着いたら……話そう」
はいと返事をすれば、そのまま「じゃあ」とそっけない挨拶をして電話が切れた。
それを確認した私が肩を落とすと、葵も私に合わせて深く息を吐いた。
「店長……勘がいいから、なんかあるって思ってそうですよね」
「………うん…」
まぁでも、会わなければこれ以上疑われる事もない。
あと1週間。
店長の誕生日になれば全てを話せるのだから、それまでの辛抱だ。
「桜さん、シャワー借りていいですか?」
「うん」
葵の問いに腑抜けながら返事をした私は、お風呂場に入っていく葵をぼんやり眺めたあと、再び化粧を再開した。
今夜は「radice」。
悠がきたら、このストレスをぶちまけてやろうと思う。
そう意気込んでいたところで、ピンポーンとインターホンが鳴って私は、立ち上がると、扉への方へと向かった。