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Blindfold
第29章 スミレ



随分経って、いつもより酔った様子を見せている悠がゆったりとしながら腕時計を眺める。




「流石に帰らないとなぁ〜」



今日は平日。


悠が何をしてる人なのかは分からないけど、きっと明日も仕事なんだろう。



「ありがとうございました」



さっさと挨拶して会計をお願いすると、悠は妖艶な目つきで私のことをじっと見てきた。



正直顔立ちは悪くない。



だから、きっとモテるんだとは思うけど……




「本当、桜って堪らないよね」



「……………」



「あの時、抱いておけば良かったなぁ」




思い出したくもない頃の話。




「よく言う」



「え?」



「あの時は悠が拒否ってきたんじゃん」



「なに? 桜も後悔してるの?」



「んな訳ないでしょ」




そう言いながらテーブルに届いた伝票を悠に渡すと悠は金額も確認せずにクレジットカードを挟んでボーイさんに渡した。




「悠、別にモテるでしょ。なんで私に執着するの」




しかも、一回自分から振ったような女を今さらちょっかい出してくる意味も分からない。




「俺、人のもの好きなんだって」



確かにそんなようなことは前言っていたけど……




「あと、抜け殻だった桜が、急にみずみずしくなってさ、あの時よりいい女だなって」



「意味が分かんない」



正直にそう伝えると、悠はまた笑う。


帰ってきたカードを受け取って立ち上がったのに合わせて私も立ち上がった。




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