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Blindfold
第29章 スミレ
「俺もそうなれるのかな、ってちょっと思ったんだよ」
言い方からして、悠も何かを抱えているのかもしれない。
ていうか、こんなよく分からないことしてくるんだし、何か理由がある方がまだマシだ。
「闇を出してかわいそうな風にしても、同情もしないし、別になびかないから」
「きっついなぁ。でもそういう正直なところが気に入ってるよ。顔にも出やすくて面白いしさ」
思わず自分の頬に触れる。
すると、悠は今までになく優しく微笑んでジャケットを正した。
そして、懲りずに手を伸ばして私の頬に触れる。
全然かわせたはずなのに、あんまり優しく微笑むから体が固まってしまった。
悠の背後で、幸さんの声が聞こえるけど何を話しているのかは分からない。
とにかくその一瞬は不思議な感覚が私の体を駆け巡ってた。
「結構本気で桜のこと、好きだよ」
「…………………」
何言ってんの?って頭では思ってる。
悠の顔が近付いてきて、このままだとキスされるっていうのも分かった。
最悪だ。
変に体が固まって動かない。
シャンパンを飲みすぎたのか……
まずいまずいまずいって思っている最中、私の頬に触れている悠の手を誰かが傍から掴んだ。
また拓也さんに助けてもらっちゃった……
そんなことを思ったの同時に馴染みのタバコの香りが鼻を掠めた。