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Blindfold
第29章 スミレ
「触んな」
聞き慣れた低い声。
「おっと」と声を上げた悠は私の方を見てペロっと舌を出した。
「ごめんね、バレちゃったみたいだね」
「っ……て、んちょうっ……」
慌てて駆け寄ってきた幸さんも私たちの姿を見て額に手を当てている。
どうして、ここに店長が……?
バレたから?
どうしてバレたの?
今朝から連続で突然店長が現れることに困惑していると、悠は店長の腕を振り切ってそのまま片手を上げて、店から消えていった。
黙ったまま。
悠が去っていったドアを2人で見つめていてかなり気まずい。
「………で? なんか言うことあんだろ」
「……………っ…」
「なんでこんなとこで───」
「──── こんなとこ? 失礼ね」
「うるせぇな、お前は黙ってろ」
横から声を掛けた幸さんに、店長がキツく言葉を返す。
言葉が乱暴でも、ここまでキツく何かを言う店長は見たことがない。
相当怒ってるってことなんだろう。
「幸さんは悪くなくて…っ……私が働きたいって言ったんです」
「………なんでだよ」
やっぱり店長が怒っているのがわかる。
「今は……まだ話せないです」
「またそれか」
不機嫌そうな態度に、ビクビクしながら、それでも昨日葵が言っていた通り、このまま引き下がりたくはない。
「今は仕事中なので…」
「そうよ。申し訳ないけど、今日は帰ってくれる?」