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Blindfold
第29章 スミレ
幸さんの助け舟に、ホッとしてると店長は「じゃあ」と言葉を続けた。
「客としてならいいだろ」
「はぁ……?」
呆れた幸さんの声なんかに店長はお構いなしで、私のことを指さす。
「こいつを指名する」
「ちょっと、いい加減にして、何馬鹿なこと言ってるの」
「ちゃんと金は払う。文句ねぇだろ」
あの幸さんが、ん……と声を詰まらせている。
戸惑っていると、店長は「おい!」と声を掛けて拓也さんを捕まえた。
「おぉー! 達也!……って、えっ…!? なんで!?」
「うるせぇな。いいから席に連れてけ。個室だ」
「え、でもお前…」
「いいから連れてけって言ってんだろうが」
ふん…と息を吐いた拓也さんは、渋々応じるとそのままインカムで部屋を確認している。
個室で……これから…こんなに怒ってる店長と2人きりだと思うと、恐ろしくてしょうがない。
何をどう言い訳すればいいのか。
とりあえず、誕生日のことは探られないように、何とかしようと頭をフル回転させる。
通されたVIPルームに、ひぃと声が上がりそうになる。
もちろん、この2週間ここに入る機会もなかったから、初めて入るわけだが、相当広い。
ここを使うだなんて、一体いくら掛かるんだろう、とかそんなどうでもいいことを考えながら、私は心を落ち着かせてた。