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Blindfold
第29章 スミレ
「じゃあ……スミレちゃん、何かあったら…呼んで」
拓也さんはそう言いながらも、「ドンマイ」って表情をしてる。
呼んでいいならずっとここにいて欲しいけど…
ペコリと頭を下げて扉が閉まるのを見ていると、店長はソファに腰掛けて、背もたれに寄りかかった。
「『スミレ』か……」
「……………」
「花言葉は『誠実』、『謙虚』……」
「あ、あのっ……」
「今のお前にぴったりだな」
強烈な嫌味を言われ、私は視線を落とす。
そして、テーブルの上に乗るお酒を目にして、グラスを掴んだ。
「あの……何飲みますか」
「…………なんでもいい」
一番困る回答だ。
しかもよく考えたら店長はバーで働いていながら、お酒を飲んでいる姿を見たことがないから何が好きなのか検討もつかない。
とりあえず、氷を入れて、目の前にあったウイスキーを入れ、それを店長に恐る恐る渡した。
「………なんでキャバ嬢なんかしてんだ」
「………それは……」
はぁと店長がため息を吐いたのが分かった。
「お金、が…欲しかったから」
「困ってんのか……? だったら何で俺に言わねぇんだよ」
「いや、困ってたわけじゃない、けど…」
「はぁ?」
もっともな反応だ。
お金に困ってわけじゃないのに、お金が欲しくてキャバ嬢を無断でやってる、なんて意味の分からない話だろう。